ニセコをベースにしたバックカントリー
- AREA ニセコ・ルスツ
JAPOW発祥の地とされるニセコは、ゲレンデアクセスから滑れるバックカントリールートだけで見れば、日本一といえるでしょう。それを目当てに訪れる海外スキーヤーの数も日本トップ。ニセコアンヌプリを頂点に、NISEKO UNITEDの4スキー場が広がり、アンヌプリからつながるニセコモイワスキーリゾートを含めた5スキー場からバックカントリーへのルートが広がっています。ニセコをベースにして楽しむバックカントリーフィールドの一例を紹介しましょう。
ニセコルールに基づくバックカントリー滑走
ニセコの主峰は標高1306mの主峰ニセコアンヌプリで、その斜面にはグランヒラフ、HANAZONO、ビレッジ、アンヌプリ、そしてニセコモイワの5つのスキー場を有します。
各スキー場のコースバリエーションの豊かさもさることながら、スキー場を起点とするバックカントリーでの滑走は、ニセコの名を世界に広める要因の一つにもなっております。
ニセコでは過去大きな雪崩事故がありましたが、現在も、バックカントリーでの滑走を禁止するのではなく、安全性を慎重に確認し、十分注意し自身の責任において滑ってほしいという方針のもと、事故につなげないための環境づくりが行われています。また、バックカントリーへはツアーガイドと一緒に出掛けることが推奨されています。
ニセコでは多くのバックカントリーガイドが活動していて、様々な種類のバックカントリーツアーが催行されています。ガイドは滑り手の技術や、その時の天候や雪の状況に応じて、数あるルートから滑走ポイントを選択します。
さらにニセコでは、バックカントリーを安全に楽しむために、「ニセコルール」を定め、徹底しております。
■ニセコルール
1:スキー場外へは必ずゲートから出なければならない。
※NISEKO UNITED より転載
2:ロープをくぐってスキー場外を滑ってはならない。
3:スキー場外では、安全に滑走するために、ヘルメットと雪崩ビーコンの装着が最低限必要と考える。
4:ゲートが閉じられているときはスキー場外に出てはならない。
5:立ち入り禁止区域には絶対入ってはならない。なお、捜索救助と調査活動は除外される。
6:小学生のみのスキー場滑走を禁止する。
各スキー場のパトロールは、バックカントリーの入り口となるニセコアンヌプリに設けられた11カ所の「ゲート」を日々コントロールします。
ゲートの開放は決められた時間に行われ、天候や雪の状況によりクローズとなる場合もあります。ゲートにはその日の最新情報が告知され、入場者ひとり一人に対して、パトロールから安全喚起の呼びかけが行われます。というのも、晴れた日などのバックカントリーエリアゲートには、知識ある上級スキーヤーだけでなく、雪崩ビーコンなどの装備を持たない滑り手も「みんなが登るなら」と並び、登攀の列について行こうとするケースが珍しくないからです。
ニセコルールバナーに書かれている日英の内容
ニセコスキー場には11ヵ所のゲートが設けられていますが、ニセコルールにあるように、スキー場内からバックカントリー(スキー場管理区域外を含む)へ出る際は、必ず「ゲート」からと決められています。また、多くのバックカントリーゾーンには、藤原の沢、東尾根、北斜面、大沢、西尾根、中尾根、見返りボウル、モイワボウル、水野の沢(特別管理区域)、ストロベリーフィールドと名称がつけられています。
人気はG2、G3からツボ足で約20~50分ほどのハイクで行けるセコアンヌプリの頂上からの滑走。ゲートから頂上部付近まで圧雪車で踏み固めたラインを作ってくれることが多いため、登攀ギアが不要でハイクは比較的容易。頂上にはコンクリートで作られた避難小屋があり、天候の急変などの際には多くの人がこの小屋で待機します。
頂上部からは藤原の沢や東尾根など様々なルートがあり、状況が良い時は森林限界の広大な斜面に軽い深雪が積もるという、ベストコンディションで滑走することができます。
Niseko各ゲートからの滑走ガイド
以下はニセコルールポスターに記されている各ゲートからの案内です。もちろん、この情報だけに頼って一人で滑走するのは危険です。海外からのゲストの方は、必ず地元のガイドについてバックカントリーへ出ることを強くお勧めします。
G1 L字ゲート 標高1,050m
※NISEKO UNITED より転載
ニセコアンヌプリ国際スキー場西側、手前の樹林帯を滑ること。大沢ボトム(谷底)及び対斜面は滑走しないこと
G2 アンヌプリ山頂ゲート 標高1,170m
谷底(ボトム)、雪が張り出した斜面(雪庇下)の滑走をしないこと。鉱山の沢(バックボウル)への横断(トラバース)は1,150mラインを保つこと
G3 ヒラフ山頂ゲート 標高1,180m
山頂東尾根、北斜面及び鉱山の沢を滑走するときは危険が伴うことを理解してスキー場外に出ること
G4 藤原の沢ゲート 標高1,180m
G3ゲートオープンの60分後に開かれる。東尾根への横断(トラバース)を安易に行ってはならない。ゲートが閉じられているとき、藤原の沢を滑ってはならない
G5 花園ゲート 標高1,050m
G3G4ゲートが閉じられているとき、東尾根方面への横断(トラバース)は危険。雪庇斜面は雪崩れやすい
G6 モイワ山頂ゲート 標高800m
見返りの沢、ニセコアンヌプリ西斜面及び五色温泉方面へのゲート。道有林内のニセコ町道はニセコ雪崩調査所が管理している
G7 ええ沢ゲート 標高790m
コースからロープをくぐって「ええ沢」を滑ってはならない。また「湯の沢立ち入り禁止区域」に入ってはならない
G8 8番ゲート 標高950m
大沢の下部へのアクセスゲート。手前の樹林帯を滑ること。大沢ボトム(谷底)及び対斜面は滑走しないこと。日本で最初のスノーボーダーによる雪崩死亡事故はここで起きている
G9 ウォーターフォールゲート 標高730m
狭い沢形(ガリー)を避けること。早めにコースへ戻ること。滝が埋まるまでゲートは開けられない
G10 アンベツゲート 標高760m
下りすぎるとコースに戻るのが困難。雪が深い。谷底には崖(クリフ)が続いている
G11 ニセコビレッジゲート 標高930m
水野の沢特別管理区域は、雪崩制御による安全対策を行っている。雪崩リスクが少ない日は、パトロール隊の監視のもとゲートは開かれる
ハイク無しでも行けるバックカントリー
ニセコバックカントリーが人気の要因ひとつに、ハイクアップをほとんど要せずに行けるルートが多いということが挙げられます。グランヒラフとHANAZONOエリアでは、上部のキング第4リフトや花園第3クワッドリフトから藤原の沢や東尾根に、花園第2クワッドリフトからはストロベリーフィールドへ。ビレッジのニセコゴンドラからは水野の沢へ、アンヌプリのアンヌプリゴンドラからは大沢や中尾根へ、など、これらはほぼノーハイクでスキー場管理区域外の斜面に入れます。
多くのバックカントリー滑走は時間をかけてハイクし、ようやくたどり着いた自然のフィールドを堪能するというものですが、ニセコの場合はリフト回しで広大な森林限界斜面やツリーランが楽しめてしまいます。このため良く晴れた日などはロープの向こう側に広がるバックカントリー斜面もゲレンデなのではないかと見間違うほどの賑わいになります。
リフトを使って1日に何本もバックカントリー滑走ができるというのは、他エリアにはないニセコの大きな特徴と言えますが、パトロールが管理しないエリアを滑るため、当然リスクは伴います。簡単に行けるからこそ、ルールに従い、ガイドツアーに参加するなど、十分注意しながら楽しみたいものです。
参考URL:https://www.town.niseko.lg.jp/information/3555/
ある日の東尾根バックカントリー
Report by リオ
1月下旬、毎日の降雪でニセコの山は例年通りの軽い雪が多くの積雪を作り出していた。
8時半のリフト営業開始前にはベースのグランヒラフのリフトには長い列ができている。クワッド2本を乗り継ぎ上部へ。山頂を目指すキング第4シングルリフトはすでに始動待ちの列だ。青空が広がる今日のような日は、多くの人がリフト降り場からG3ゲートを通り山頂へと向かう。
新雪を1本でも多く滑りたい我々は、ガイドに連れられ、すでに空いてるG5花園ゲートからクワッド沿い疎林帯の急斜面へ飛び込んでいった。ターンのたびに前が見えなくなるほどの雪が舞う。深く軽いニセコ特有の雪はこの時間、まったくのノートラックだ。このポイントをリフトで3本回した後は、行列のキング第4に並ぶ。G3からハイクした滑り手は、早くも頂上部から気持ちよさそうなラインを付けている。
キング第4を降りると、我々はG3の1時間後に開放されるG4ゲート前に並んだ。頂上部からではないが、藤原の沢や東尾根ポイントを滑ることができるからだ。時間になるとパトロールがゲートを開ける。スノーボーダー、スキーヤーが一斉にノートラックの斜面を滑りだす。森林限界点の30度前後の広大な斜面は開放感抜群で、標高が上がった分雪も軽く感じる。
圧雪されないフワフワの新雪バーンを約2㎞滑走する。まさにニセコの大自然を感じる瞬間だ。G4からのBC滑走を2本楽しんだ後は、頂上ゲートのG3からアンヌプリトップを目指す。先行者が作ってくれたツボ足階段がしっかり作られており、ハイクは難しくない。
約30分で避難小屋がある山頂に到着。ここから東尾根と呼ばれるポイントに滑り込む。もうすでにラインはついてるが、頂上部からの景観は格別。ノートラックではないがまだまだ踏み荒らされてないラインはある。森林限界の壮大な斜面にドロップする。雪はさらに軽く、大きく舞う。
疎林帯から樹林帯に続くエリアまで3㎞ほどを一気に滑る。ガイドは、さらに急斜面へ案内してくれて滑走が終了。ここからは森の中に続くトラバースラインからスキー場のボトムまでスキーで移動する。この日はノーハイクで、ロングツアーを含む6本のパウダーラン。ニセコの1月を堪能した。
最後に
バックカントリーにはたくさんの魅力とともに危険もあるため、しっかりとした装備、山でのマナーやリスクに関する知識、万が一の際の救助方法や保険、自身の健康管理など含めて、入念な準備が必要です。
特に海外ゲストが北海道でバックカントリーへ出るときは、必ず土地に詳しい地元のガイドに引率してもらいましょう。北海道には外国語対応ができるBCガイドやガイドクラブも複数あるため、必ず利用することをお勧めします。加えて、天候不順により雪崩の発生が高まりやすいことから、その日の天候やコンディション等の情報を地元スキー場の事業者より確実に得た上で、滑走の判断をしてください。